エームジーク企画
エー・ムジーク(E-Musik)とはエルンステ・ムジーク(ErnsteMusik)の略語でドイツ語である。 訳すと真剣な、または真面目な音楽となる。一般にドイツではクラシック音楽や現代音楽など芸術性の高い音楽をそう呼び、娯楽として聴く音楽をウームジークとして分ける。このような音楽の分類に、私達日本人はすこし違和感を持つかもしれない。そして日本ではそのような分類の必要性はないようにも思われる。
クラシック音楽は日本では非常に人気がある。そのようにたくさんの愛好家を生み、育てたのにはいくつかの理由がある。まず第一に、西洋音楽と日本の伝統音楽を比較した場合、西洋音楽のほうがはるかに合理的に感じる。音楽を分析するのが容易だったため、2、3世紀の間に著しく複雑化して発展を遂げた。そのような西洋音楽とその発展の過程について日本人が興味を示すのは至極当然であろう。また日本人は未知なもの、異質なものに対し、非常に強い好奇心を示すように思われる。その純真な知的欲求の強さと、これまで積極的に外来文化を採取してきた歴史的習慣もそれらの理由に挙げることができる。そしてクラシック音楽に救済を求めているものは多い。クラシック音楽は全て宗教、特にキリスト教をもとにつくられていると言える。クラシック音楽の中に宗教的救済を求めている日本人は決して少なくない。これらの理由により、ドイツで言われるエームジークは、日本で多くの愛好者を育てたのである。そして今後ゆっくりと時間をかけて、クラシック音楽は日本独自の音楽芸術になっていくことに疑う余地はない。
西洋クラシックであり、日本の伝統音楽であり、私はそれらを継承、保存したいとは考えていない。いつの時代も古いものは腐敗し淀み、大抵は純真さや真面目さを失ってしまう。しかし、いつの時代も新しい音楽、新しい表現は必要である。エームジークという言葉にエクスペリメンテ・ムジーク、日本語で実験音楽という意味を持たせることはできないだろうか。真剣さやまじめさという言葉が使われなくなって久しい。最近この言葉がすこし使われているが、それが妙に空々しく感じられる。日本でどれだけの人たちがエームジークという言葉の意味を知っているだろうか。それを理解する必要はないし、真面目な音楽と娯楽の音楽を区別する必要もないだろう。ただ、日本で真面目な音楽というものが危機にあるのは大きな問題だと感じる。エームジークとウームジークのより良いバランスを求める気持ちが、エームジーク企画を始める動機となっている。
(ピアノとピアニスト(コンサート冊子)より)
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